【SS】ルパパト「歪」【R18】
少し遡って、ノエルを泊めた夜の魁利と透真。
ストレートに魁透エロです。リバっぽいとこもあるけど「透真は魁利に突っ込まない」のが自分ルールなので魁透です。
出番が多すぎるノエルですが、当て馬とか鞘当てとかじゃないです。
今回の話でやっぱりノエルいいなーと思いながら書いたらこうなった……赤青なのにノエル愛が暴走しました(笑)。
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いつもなら終わりにちょこっとつける小ネタですが、ムダに長くなったので今回は頭に置いとく。
魁利に叩き出された日からノエルはちょいちょい遊びにくるようになりました、という妄想。
銀「ボンソワ、魁利くん透真くん」
赤「ぎゃー!!」
青「ノエル! なんでここに!」
赤「なに平然と二階の窓から入ってきてんだよ! 鍵もかかってただろーが!」
銀「うん、魁利くんの部屋に行ったらいなかったから、透真くんのところかなってそのままスライド」
赤「答えになってねえし、つーかフツーに不法侵入だし! おまわりさーん!」
銀「はいは~い、おまわりさんならここにいますよ~」
赤「めんどくせえ! オレが部屋で寝てたらどうする気だったんだよ怖ぇな!」
銀「そのときは起きてもらって遊ぼうかと……トランプと花札持ってきたし。あ、もちろん三人でもいいよ、そのほうが楽しいよね」
青「修学旅行か……」
赤「あのさ、空気読んでくんない? さっきから完全スルーしてっけどオレら何してたかわかるでしょ、どー見てもおじゃましましたって言う場面だよコレ、もう五分後だったらおまえガン無視してハメてたよ!?」
青「いやそれは……」
銀「おやおや魁利くん、若さは認めるけど良識ある慎み深い大人を困らせちゃダメだぞ☆」
青「今この状況でおまえが良識と慎みを語るのか!?」
銀「あーあ、二人とも忙しいから遊んでくれないっていうのかい、さびしいなあ。じゃあ初美花ちゃんの部屋に行って二人っきりでババ抜きでも……」
赤青「「待て」」
このあとめちゃくちゃババ抜きした。
ちなみにこのメンツだと透真だけがボロ負けします。結局初美花を呼びにいく流れ。
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【歪】
三人の住居空間に、他人を招き入れたのは初めてだった。
普段なら決して侵入を許さないその男、高尾ノエルは、自分たちの目の前で負傷して倒れた。だれからともなく、連れ帰って手当てしてやろうという話になる。
彼は傷の手当てをされているときも目を覚まさず、初美花が「死んじゃったらどうしよう」と一人でおろおろしていた。致命傷ではないが、心身の疲弊もあるのかもしれないと思いながら透真は包帯を丁寧に巻く。慎重に見えて、必要と判断すれば多少強引でも突っ込んでいく男だ。この小柄な肉体に、見た目よりも負荷がかかっていたとしても不思議ではない。
安静にしていれば大丈夫だと、老執事がいささか冷淡な口調で言い置いていったから、とりあえず魁利のベッドに寝かせておくことにした。
「魁利はどこで寝るの?」
「透真の部屋」
初美花の問いに、魁利は当然といった顔で答える。この家にはベッドがきっちり三つしかないから、一つを客に取られれば必然的に男二人が同室になるのだが、長身の男二人が一つのベッドを使う不自然さについては、初美花は思い至らなかったらしい。
「ベッド狭いからってケンカしちゃダメだよ? おやすみ」
「おう、おやすみ」
魁利に押し込まれるようにして、透真は自分の部屋に入る。後ろ手に鍵をかけた魁利が、にやっと笑ってみせた。
「狭いベッドでは仲良くしろってさ」
「おまえがじっとしてればケンカはしなくてすむぞ」
いちおう言い渡してはみたが、さっそくといった様子で床に服を脱ぎ捨てている魁利にそのつもりはないだろう。
「そりゃ難しいな……」
明かりが消され、追い込まれるようにしてベッドに転がされた。
透真の腰に跨がって舌なめずりをする魁利からは、おとなしく寝る気などまったく感じられない。
ため息をついて彼を見上げた。
「ノエルが起きたらどうする」
「そんとき考える。あいつなら気づかねえふりしてくれんじゃね?」
そう願いたい。隣の部屋にはそこまで音が筒抜けなわけではないが、静かな夜に耳を澄ませば、なにをしているかくらいは知ることができるだろう。知らないふりをしてくれるという期待はあっても、あまり聞かれたいものではない。
「やっぱりノエルがいるときくらい我慢し……」
「ノエルがいるから、俺がここにいてもおかしくないんだろ」
強引な理屈で、こちらのシャツを脱がそうとしてくる。こういうときの魁利はなにを言っても聞かない。
「いいんだよ、ノエルなんか……」
囁きにわずかな苛立ちが込められているのを悟り、透真は両腕を伸ばして魁利を受け入れる。今夜は少し、面倒なことになりそうだ。
「ん……っ」
目を伏せた魁利が、奥歯を噛みしめて喘ぎを殺す。両手は透真の手をシーツに押さえつけたまま、やたら激しく腰を打ちつけてきていた。こうなるとこちらからは手が出せないから、魁利のなすがままになる。
「なに、平気な顔、してんだよ……」
耳元で魁利が切れ切れに囁いた。平気なはずがない。口を開けば惨めな呻きが洩れるのはわかっているから、今も魁利の理不尽な言葉に返事ができないというのに。
「楽しめって……」
与えられる快楽なら、もう充分すぎるほどだ。魁利が身をすり寄せてくるたびに、腹のあいだで押しつぶされた熱が刺激される。奥まで蹂躙され、内側からこみ上げてくる快感に理性を崩されそうになる。
「なあ、透真……」
頭を下げた魁利は、胸の突起に舌を這わせたかと思うと強く吸い上げた。敏感になっている体にはそれだけでも刺激が強く、透真はこぼれかけた声を唾液とともに飲み込む。それでは魁利が満足しないのはわかっているが、女のように嬌声をあげるわけにもいかない。
「ちゃんと、感じてんのかよ……」
わざわざ問うまでもなく、つながっている反応は魁利もよくわかっているはずだ。なのに、彼はまだ足りないとばかりに要求してくる。
予想どおり、今夜の魁利は面倒だと頭の片隅で思った。
「やべ、イく……」
抽送が速くなり、肩に歯が食い込むのを感じる。終わりの瞬間に声を殺すためかこちらの肌に噛みついてくるのがいつの間にか習慣化していて、その痛みが透真にも条件反射的に絶頂を促すようになっていた。
「……っ!!」
声を上げず、二人は同時に果てる。組み合っていた手が汗ですべるが、気にしてはいられない。それまで呼吸を禁じられていたかのように肩で大きく息をし、なんとか呼吸を正常に戻そうとする。
だがしばらくは抱き合ったまま、荒い息をつくしかなかった。
自分の上に投げ出された魁利の重みを感じながら、透真は少しばかり酸素を取り戻した頭で考える。
魁利が執拗に求めてくるのは、なにかわだかまりを抱えているときだ。頭が切れるだけに、結論の出ない状態がひどく不安で焦れったくなるらしい。
今はノエルがその原因だろう。助けると最初に言ったのは魁利だった。それなりの作戦があるのだろうと思ったが、実際にはどう向き合えばいいか判断がつかないようだった。
胸の上から重みがなくなり、魁利が真上から覗き込んでくる。その目は少しも満たされてはいない。
無言で続きを要求してくる相手を睨みつけ、透真は自分の上から魁利を振り落とす。そして文句が出る前にその細い両腕を頭上に押さえつけると、先ほどから無理ばかり言う口を手でふさいだ。
魁利が目つきだけで抗議してくるが、冷笑で答えてやる。
「されっぱなしは飽きた」
いいぜ、と口をふさがれたままの彼は答え、自ら目を閉じた。できるものならやってみろという姿勢だ。
これはこれで手間がかかりそうだと思いながら、汗ばんだ肌に手をすべらせた。
食事のトレイを片づけに部屋に入ると、ノエルは床で腕立てをしていた。
「もう動けるのか」
「体は動くものじゃない、動かすものだよ」
片手で自重を支えていたノエルは、すばやく反対の手に切り替えてまた腕の屈伸を始める。鍛え上げられた肉体はこうした地道な努力の結果なのだろう。
「包帯を巻き直してほしかったら言え」
「優しいね、透真くんは」
「嫌味か」
ノエルは苦しげに笑い、それでも軽やかに跳び跳ねるように体を起こして一気に立ち上がった。飛び散る汗を目にし、クローゼットからタオルを出して渡してやる。
「Merci! ほんとうに気が利くなあ」
「魁利に汗くさいと騒がれても面倒だからな」
「了解、そのへんはきちんとしておくよ。ぼくも嫌われたくないからね」
汗を拭きながら、ノエルは普段通りの笑顔を向けてくる。こちらがにこりともしないのに、大したものだと勝手に感心した。嘘くささからいえば、魁利の上をいく。
「昨日、夢を見たんだよ」
世間話でもするように、彼は口を開いた。まともに聞く義理もないからトレイの置いてあるテーブルにまっすぐ向かったが、ノエルの声から笑みが消えたことには意識の隅で気づいていた。
「すぐ近くで、誰かと誰かが愛を語り合っている……そんな夢さ。不快ではないんだけど、なんだか不安なやりとりが交わされている気がしてね、夢の中の他人事なのに、心配になってしまった」
「……………」
昨夜の、隣の部屋での自分たちを示唆しているのか。目が覚めていたとしたら、物音くらいは聞こえたかもしれない。だが意味のある会話は聞き取れなかっただろう。なにかの探りを入れようとしているのか……
過剰に反応してボロを出してもと思い、表情を変えずにトレイを取り上げる。
「大怪我して気絶中に見る夢としては、ずいぶんロマンチックだな」
「根っからのロマンチストだよぼくは」
肩をすくめたノエルは小さく笑ってみせる。しかしすぐに頬をひきしめた。
「透真くん」
彼は沈黙を促すように人差し指を唇に当てたあとで、その指を自分の胸元へと持っていった。
「うつむく姿勢のときは気をつけて。見えちゃいけないものがあるかもしれない」
言われて透真は自分を見下ろす。シャツの中、ノエルが示した場所に、魁利がつけた赤い痕があった。痕をつけたがるのは魁利の癖で、何度怒っても通じない。せめて見えないところにしろと再三言ってあったはずだが、アングルによっては危険だということか。
思わずその位置を押さえたが、普通に立っていれば気づかれないだろうし、エプロンをしていれば襟元が大きく開くこともない。少し考え、動じることはないと判断した。
「……弱みを握ったつもりか」
「まさか! すべての愛し合う二人を、ぼくはいつでも応援しているよ」
大仰に手を広げ、芝居がかった口調で彼はのたまう。だが直後に、横目で透真を見やることは忘れなかった。
「愛さえあれば……ね」
「そうか」
トレイを持ってドアノブに手をかける。これ以上の会話に意味はない。
「じゃあ、おまえの応援は不要だな」
愛など。
初美花に言い寄るナンパ男ほども持ち合わせていない。自分も、魁利も。
しかしこれがただの快楽だけを共有する間柄であったなら、ノエルの的外れな言葉も笑い飛ばしてやれただろうに。
居心地の悪さに会話を断ち切って部屋から逃げ出し、ドアの外に寄りかかる。
「……ちがう」
どうやっても言葉にすることができない。この感情は。この関係は。
「そう……語り合うのが愛なら、なんの問題もないんだけどねえ」
ノエルはそう呟いて、ドアを見つめた。
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魁利ってあのコーヒーの淹れ方見ると、荷物が少なくても床やベッドの上に散らかし放題だと思うんだよね。だからノエル泊めるときに全部かき集めてクローゼットに突っ込んだら「あれ?部屋広くね?」ってなったんだよきっと。
透真が開けたときになだれ起こしてないといいなあ、と自分で書いてて思いました。