クローズ感想。
新宿マルイなんてバルト9以外に用事がないので、バルト9なんてよほどの限定上映でないとわざわざ行かない劇場なので、数年ぶりに足を踏み入れたんですがいつのまに全館オタク仕様に……と浦島太郎気分でした。池袋に来ちゃったのかと思った。
てことで仮面ライダークローズ、限定上映。
個人的に本編以外は映画も含めて全部おまけで「べつに見なくても支障がない」と思ってるので動画配信や円盤特典すらちゃんと見ないしスピンオフ展開もコンプリするつもりはなくて、今回も「まあ進藤学がおもしろそうだし、発売されてもたぶん買わないし」っていうくらいの動機で行ったんですが。
そしたら、スピンオフどころかがっつり物語が「進んで」いて、それによって最終回の決着がひっくり返っていて、このあとの時系列の物語が全部これ準拠になるとしたらもうほぼ正規の続編じゃないか、というレベルの内容で、正直ちょっと困惑しました。
エグゼイドから冬映画とかも本編の一部として辻褄を合わせてくるようになって、最終回後のスピンオフ作品が翌年まで作られるようになったので、もう「テレビ本編」という概念は通用しないのかもしれません。特撮って一年で終わる物語だからそのエンドを大事にしたいっていうのもあって、いつまでもおかわり状態でずーっと「本編」がつづくのってホントに喜ばしいことなんだろうかと考えてしまいます。
またね、ビルドの「本編以外」ってなんか微妙に方向がズレてるっていうかね、「テレビではできないけどホントはやりたいこと」優先なのかなと思う。そのためには多少の力業も辞さない構え。だから余計に、追わなくてもいいんじゃないかなって思えるのね。
「ローグ」はまあ正しいスピンオフっていうか、見なくても支障がなさそうだから1話でやめた。東映が血に飢えてるんだろうな、と当時公開されてたヤクザ映画のポスター見ながら思ってました。
でも夏映画は露骨に後付けだったよね。ブラッド族ってなんだよ、実は4人で来てました~とか絶対今考えただろ!って気分になった。夏映画については、ルパパトと要素がかぶりまくってしまったため、相対的に評価が低くなる部分もあるんですけど。
今回の映画も「ブラッド族」って単語が出てきてあーって思ってたら、エボルトにお兄さんがいました~とか、今さらそんなこと言われても感ハンパない。
夏映画と今回のVシネは「本編とは無関係です」でぜんぜんいいような気がしています、個人的には。
とまあ作品の外でいろいろ思うところはあったのですが、まあちゃんとビルドらしさは守ってておもしろかったです。
こっからネタバレなので観る予定の人は気をつけてくださいね。
——————————–
観た直後にツイッタで言ったけど。
兎龍とか龍猿とかポテヒゲとか幻巧とかいろんなカップリングの人集めてそれぞれの立場から今回の感想と今後の活動方針について語ってもらうサミットやりたくなる話だった #実際どうなの
あの最終回は、三都に分かれて戦争してた「あってはならない世界」が、視聴者がいる「本来の世界」に創り変えられて、そこで「今はもう存在しない世界」から来た戦兎と万丈が、こっちの我々が知りえないビルド本編を語りなおす、っていうオチなわけですよね。今ぼくらが生きているこの世界に仮面ライダーもエボルトもいない、でも戦兎と万丈はいるんだよ!っていう。
すごく美しいラストで、冬の平ジェネもその美しさはちゃんと守った上で物語を構築してくれてた。それくらい侵しがたいラストだったんですよ。
それを、「今後もグリスやローグ出したいから全部なかったことにします」って自らひっくり返してくるのすごいな!
一般的なファン目線でも言いたいことはあるけど、まずそれぞれのカップリングの人たちが気になる。
メインである兎龍も含め、あの最終回にはみんないろんな意味で衝撃を受けただろうし、そのまま受け入れようとする人、今後を具体的に考えようとする人、抜け道を探そうとする人、無視することに決めた人、それぞれが何かしらの選択を迫られたと思うんですよ。
また出会いなおして新しくやりなおすとか、旧世界だけで生きていくとか、あえて波風立てるとか、力業で思い出させるとか、もうひとつ並行世界作っちゃうとか、とにかく悪あがきしたと思うんですよ。
たとえば、片方が戦兎か万丈で、もう一方がみーたんとかカズミンとかだったら、相手に忘れられているのに自分だけが覚えているっていう切なさがあるじゃない。なにがどうしたって悲恋じゃない。そこで本が一冊出るくらいの妄想ができちゃうじゃない。
たとえば、内海とヒゲとか、両方が完全に忘れて赤の他人になっちゃってる状態なら、なんとかしてまたくっつけなおそうとするじゃない。二人のアロンアルフアになりたいじゃない。そこで本がもう一冊出るくらいの妄想ができちゃうじゃない。
戦兎と万丈だって、この世界に二人きりっていうのがいいんだからさ。またみんながドヤドヤ押しかけてくるんじゃ、まあ楽しいけど余韻台なしっていうかさ。永遠の二人ぼっちじゃないとできないことってあるじゃない。そこで本がさらに一冊出るくらいの妄想ができちゃうじゃない。
放映終了からみんなが自分の妄想を成立させようと努力して、きっともう一段落したんじゃないかなというところでこれですよ。むごい。まず私が思ったのはそこですね。
逆にいえばもうそれが感想の大半ですね。どの組み合わせでもいい、この二人でやっていくと心に決めた同人屋となら、今なら一晩語り明かせる気がする。
あとさ、マスターの記憶が戻ってないってのはアレだよな、単に前川さん呼べなかったからだよな。だからエボルトもスタークの姿で出てきたんだよな。仕方ないんだけど、ちょっとがんばってほしかったな、戦マス勢のためにも(そんな勢力ない)。
——————————–
そんでまあ、メインディッシュとしてのキルバス。
ていうか進藤学。
アレ、初めて出会った人は「なんだあのヘンタイ」で済むと思うけど、うっかりゴーカイジャーでかっこいいシド先輩を見ちゃってる人だとけっこうショックなんじゃないかなと思った……
でもまあ久しぶりに見たけど相変わらずの肉体美だしおもしろさパワーアップしてるし、文句なしのオイシイ役でした! 戦兎に憑依したとき、あっちゃんがすごいがんばって真似しようとしてたけど、一朝一夕じゃあの気持ち悪い動きはできないわよねやっぱり。あのおじさんずーっとアレやってきてるからね。
Vシネの一回きりにはもったいないくらいの、濃い悪役でした。夏映画に使えばよかったんじゃないか、そしたらエボルトをわざわざ新世界に復活させる必要もなかったんじゃないか。いや、子供泣くか……
兄なのにかなり年下じゃん!って思ったけど、ショタに憑依したって兄は兄なわけだし、なにより進藤学と前川泰之ってそんなに年齢違わなくない? あれ? って自分の年齢認識が軽くパニックになりました。
出会ったタイミングが20代とかだと、40代で出会った人とすぐに同期できなくて困る。
キャラ的には「同族をも滅ぼすマッドな暴君」ってことで、相対的にエボルトをまともに見せる作戦。
まあね、エボルトとか映画の3人とか見てても、ブラッド族って基本的に論理的で慎重で几帳面だよね。よその星に潜伏してこつこつ滅ぼすことに抵抗がないタイプだよね。そりゃあ宇宙とド派手に無理心中したいやつにはついてけないってなるわ。わかるー。
ただ、あんなに渇望してた地球殲滅をやめて宇宙に帰るってのはどうなんですかね、めんどくさい兄を倒してくれたからって恩義感じるようなやつなんですかねエボルトって。
——————————–
でも万丈にフォーカスするなら、すごくビルドでした。クローズだけどビルド。いい万丈話だった。
かつての被害者から「見殺しにした」と責められ、「あのころの自分は助けを求める声が聞こえてなかった」と告白する。その自分を変えたのは戦兎で、借り物の「愛と平和のために」がちゃんと自分の行動原理になってることを自覚する。そうだよなあ、万丈ってそうなんだよなあ、かっこ悪い自分も認めるんだよなあ。
エボルトの挑発に乗せられたかたちとはいえ、要所要所でがんがんハザードレベルを上げまくってキルバスを倒すってのも王道でよかった。
戦兎は戦兎で、相変わらず万丈にムチャするしムチャさせるし、おまえ万丈は何しても壊れないと思ってんだろ。万丈の信頼を利用してないかあいつ。
んでヒロインとのやりとりが、すげえ万丈。万丈からの矢印はぜんぜん出てないんだけど、びっくりしながらもまんざらではなさそうな顔がものすごく万丈。
なんかね、やっぱあいつリア充なんだわ。モテるんだわ。彼女いなかったことなんてこの一年くらいなんだと思うよ。戦兎なんか、葛城巧×佐藤太郎だからね、非モテ×非モテだからね、そりゃ100%非モテだよね。起きて女子が横にいてもいきなり肌見せても、万丈みたいな反応はしないよね。万丈だからゲストヒロインが成立するんだと思う。
っていう感じで、とにかく万丈を愛でるなら問題のないストーリーでした。
たぶん万丈は、戦兎と相棒であることと、戦兎とともに生きることはイコールじゃなくてもいいんだよ。でも戦兎はそこがイコールになってて、自分がいないと万丈が立ち行かないように仕組んでる。今も万丈が馬渕さんとデートしてるぶんにはかまわないけど、彼女と生きていくってなったら穏やかじゃないはず。
戦兎は万丈が今ここにいなきゃ生きていけないけど、万丈は戦兎との過去を胸に生きていけるタイプで、だからこそ万丈には戦兎から離れてほしくないんですよ、戦兎のために。わたし戦兎ファンだから(笑)。
——————————–
て感じで、ビルドの一エピソードとしては変わらないノリでおもしろかったんだけど、設定的には飲み込めない部分もけっこうあって、本編とちがって「公式さまがそうおっしゃるなら」とは言えない立ち位置ゆえに、モヤモヤする作品ではありました。
もし次があったとして、この話のつづきだとしたら、もう観ないかもしれないです。
でも進藤学レベルのフックがあったらまたほいほい釣られちゃうんだろうなあ……(笑) キャスティングの好みはすごく近い自覚がある。