【SS】由利と等々力「習慣」

ゆりとどエロ。
前に書いたエロの続きを書いていただけるということだったので、こっちは時系列遡ってみたんですけど、想像の遥かに上をいくエモい作品をいただいてしまってこっちのがノーテンキすぎるのが悔やまれる…

私がはじめに書いたのがこっちで
https://pictbland.net/items/detail/1169734

星崎さんのエモいのがこっちです。
https://pictbland.net/items/detail/1185495

というわけでええと、無関係でノーテンキなエロです。


「習慣」

おまえは、素直すぎる。

笑いを噛み殺しながらそう言う彼の声を、幾度聞いたことか。褒め言葉の場合もあり、愚痴や叱責であったり。
あるいは、睦言として。

男女ではないから強いて同じことをする必要はないのだが、他に方法を知らなかった等々力は由利にそれを求め、その結果なのか由利のほうでも稀に望むことがあった。
互いにはっきりそうと口にするわけではなく、その場のやりとりや雰囲気からそれとなく察せられるのだ。不思議なことにはどちらも譲らないという事態にはならない。
今日も、もつれ合って脱いだり脱がせたりしているうちにベッドの上に転がされた。こちらを見下ろす目にぞくりと体の芯が疼き、拒絶するという頭はなくなって、おとなしくシーツに両手とひざをつくことになる。いつのころからか、自分が受け入れるときはいつもこの体勢だった。習慣のようなものだ。
「んっ……」
スキンをかぶせた指が這い込んでくると、自然に妙な声が出る。今も弓を引きつづける手はごつごつと節くれ立っていて、中を押し広げる動きが慎重であればあるほど、思わぬところを抉っては刺激していく。
「あ、あっ」
シーツに顔をうずめて堪えようとするが、ものの数秒で観念した。
奥まで差し込まれる指に翻弄されるのは毎度のことで、そしてすぐにもの足りなくなる。「この後」を知っている体は、否が応でも期待してしまう。
たまらず、肩越しに見返って訴えた。
「早く、きてくれよ」
普段は表情の乏しい男が、その瞳に欲望を漲らせる瞬間を目にするのは、いくらか痛快だった。それも束の間だが。
コンドームの袋を開ける音と彼の息づかいだけが耳に入ってきて、いつもながら体が緊張する。
解されたそこへ指よりもはるかに太い先端が押し当てられ、思わず枕を引き寄せしがみついた。
「ひぃ……っ!」
みっともない悲鳴を上げても、嘲りや咎めはない。
突き上げられ揺さぶられるたびにこぼれる声は自分で止められず、なにを口走っているかも自覚がない。相手の名を呼んだような気も、もっとほしいとねだったような気も、どさくさにまぎれて普段は腹の底に沈めている感情さえ吐露させられている可能性もあるが、どこまで言葉になっているかは彼しか知らない。
「……!」
由利が、奥まで突き込んだところで動きを止めた。
限界が近くなった印だ。
背に覆いかぶさってきた由利は、太い腕で等々力の体を抱きしめる。耳元に荒い呼吸が聞こえ、中にあるそれは今にも弾けそうに脈打っていた。急にブレーキをかけられたもどかしさに、つい彼を呼ぶ。
「由利、」
体の前にまわされた手が、胸から腹へと静かにまさぐるように下りていった。先ほど等々力の腹の中を掻き回した指が、同じ丁寧さで敏感になっている肌を愛撫している。
「由利!」
焦れた叫びでようやく、一度も触れられることのなかった等々力の熱にその指が絡みついた。
「ぅあっ……!」
念入りな愛撫を受けるまでもなく、彼の手の上で達する。
直後に、等々力の中で由利も果てた。湿った呻き声が耳をくすぐり、つい首をすくめていた。
最後に抽送を速めるのではなく、静止した状態で絶頂を迎えるのが由利独特のやり方だった。それ自体に文句をつけるつもりはないが、妙な気恥ずかしさに襲われるのだけは未だに慣れない。彼は息が静まるまで、この姿勢のまま離れようとしないのだ。
「おい、抜け……」
「嫌だ」
弱々しい訴えは即却下され、体を縛る腕の力が強くなる。そうだった、まだ始まったばかりだ。あと数回はつき合わされるとわかりきっていたはずだが、もうしばらくするとひざを立てているのもつらくなる。
先を想像した等々力は、「ぐええ」と呻いて顔からシーツに突っ伏した。

眼鏡に手を伸ばすのも面倒だと思いながら、天井を眺める。
もう若くない体のあちこちが軋み、喉も嗄れている。いつもながら満身創痍だ。
「水……」
かすれ声も聞き洩らさない由利が、ベッドサイドの水差しからグラスに注ぎ差し出してきた。今ばかりは当然の奉仕だろう。
「騒ぎすぎだ」
あれだけ責め立てておいて、よくもそんな冷淡な言葉が吐けるものだと思う。
「……いっしょに騒いでくれてもいいんだぜ?」
空になったグラスを返すと、いかにも呆れた顔で受け取った彼は、ため息とともに洩らした。

おまえはほんとうに、素直すぎる。


受けが「ぐええ」って言うほうのBL。