いきなりの飛賢。

衝動的にスマホで書いて衝動的にツイッタに流したやつ。賢人が闇堕ちしてるあいだマスロゴしか見てなかったからかなり曖昧な記憶で書いてる。

賢人帰還後。

 *

店のベンチでクッションにもたれて絵本を開いている彼の横に、少しためらいながら腰かけた。
彼は顔を上げず、本を脇へ置く。二人きりになる機会がなかなかなくて、彼だけが店に残ったのは好機だと思ったのだが。
「賢人」
呼びかけてはみたものの、こちらを見やった目にかける言葉は思いつかなかった。
彼は苦笑しながら、口ごもる飛羽真の手をとる。
「……なんでもしてくれ」
この手で殴っても、正面から罵ってもいい。それだけのことはしたのだから。彼はそう言うけれど。
「おれは、ただ……」
ただ、こうして再び同じ時間を過ごせることが、握られた手の温度を感じられることが、うれしいだけで。
久しぶりに間近で見る顔へ手を伸ばすと、わずかに相手の表情が硬くなった。殴る気なんかないのに。
そっとその頬に触れてみる。
彼は驚いたようにこちらを見て、それからくすぐったそうに目を細めた。
そんな表情も現実感がなくて、両手でその顔を押さえつける。今見えている顔のかたちを確かめるように、指で掌で探っていく。
その手を払いのけもせず、彼はただこちらをまっすぐ見つめている。
「泣くなよ」
そう囁く声はちゃんと優しくて、以前の彼と同じだった。
「泣くだろ」
返す言葉は涙で滲んで震えていたが、二人はその瞬間笑い合った。
「……たしかに」
もそりと呟く唇がゆっくり近づいてきたかと思うと、頬に柔らかい感触があった。
賢人は飛羽真の濡れた頬を拭うように唇をすべらせ、ついでのように舌先で舐めていく。
「変な味だ」
そう言って笑う唇から目が離せず、飛羽真は彼の顔を抱え込んだまま自身の唇を重ねた。そんなことをしたのも、したいと思ったことさえなかったが、今はそれしか考えられなかった。
鼻が触れそうな距離で覗き込んだ瞳は、戸惑っているようにも躊躇っているようにも見える。
「…いつも、始めるのはおまえなんだ」
その言葉の意味を尋ねる前に、首を抱えられ強く引き寄せられる。はっと息を吸おうとした口はふさがれて、そのままベンチに押しつけられた。
濡れた感触に怯んだのは一瞬だけで、二人はすぐ相手を求めることに夢中になった。言葉ではないやりとりは、互いの気持ちを確かめ合うのにふさわしく思えた。
「……一人じゃ、なにも始められないんだよ」
息を切らし、飛羽真は呟く。
いつのまにか乗りかかっているのは飛羽真のほうで、賢人は飛羽真を抱きしめたまま天井を仰いでいた。
「おれの物語のいちばん最初には、賢人がいるから」
暫しの沈黙のあと、賢人は飛羽真を抱く腕に力を込め遠慮がちに答える。
「これからも、いていいかな」
「なに言ってるんだよ」
脇腹をつついてやると、彼は身をよじって笑い出した。

 *

外でお父さんがピヨピヨ見守ってる。