部活動の先(ハイキュー感想+α)

去年のうちに出しておきたかったなあ、なハイキュー完走感想。

烏野のさあ、ものすごく北東北なとこが好きなんだよなあ……
「いずい」とか「焼かさった」とかさらっと出てくるのも好き。


突然ですがわたくし部活というものが根本的に好きではなくて。小学校の「クラブ」から大学の「サークル」に至るまで、入らないで済むものは徹底的に避け、強制の場合は帰宅部に近い部を探す、というくらいに関わらないようにしてきました。なにかもう「所属」自体がムリだった笑
なので、スポーツ部活マンガはあくまで異世界ファンタジーとして、ふわっと楽しむというスタンスでした。バトルマンガとして受け止めるというか。

ただあの、キャプ翼の「小学校のサッカー少年が全員Jリーガー」方式だけはどうもダメで。
必殺技よりあの等身よりありえない、「だれも挫折しない」というファンタジーがどうしても飲み込めなくて。それはスポーツとかバトルとか以前に、人間ってそうじゃないだろって話なんで。

そもそも部活動の意義がわかんなかった人間だから、野球とサッカーを除いてほとんど「将来」につながらないことにそこまで必死に……というのがあまりにも遠い世界だったんですよね。
ジャイキリみたいな最初からプロの話はいいんだけど、進んで読むほどスポーツ自体に興味ないし。

なので、スポーツマンガは基本的に人から勧められて読む以外のルートはないです。ハイキューもそう。あと作者が軽米出身ていうのもあったかな。それは無条件に推す決まりなんで笑

ハイキューは、部活の話なんだけど「将来」をごまかしてないんですよ。
高校生の肉体に負荷をかけることの是非とか、先輩である大人たちの視点とか、部活の「後」を最初から考えてるのが伝わってくる。それで「この人信用できるな」と思ったのは大きい。

私のお気に入りは月島蛍なのですが、初期の彼の「どうせ部活だし」っていうスタンスがわりと衝撃でした。
たかが部活でがんばったって、その後プロになるわけでもないし、なんの意味があるのって。体壊したら元も子もないじゃんって。頭もよくて進学確定の彼だから説得力がある。
私がスポーツマンガに覚えていた違和感はまさしくそれだったんだよなあ、ってスポーツマンガのしかもレギュラーで強いほうのキャラが言ってくれたことに驚きました。
でも「たかが部活」なのに、ツッキーはどんどんのめり込んでいく。体力なくなっても怪我しても、全力で勝ちにいこうとする。バレーが好きという気持ちは理屈じゃない、その魅力にあらがえないというのが、理屈っぽくて冷めてる彼だからこそ表現できたんだと思います。日向影山はほら、もともと理屈通じないから……

本当にすごいのは、彼らの「部活描写」は高校1年で終わるんですよ。弱ペダみたいに順当につづいていくと、1年時のメンバーがベストだったよなあなんて話にもなるけど、そんなこと言わせない。烏野のベストメンバーはこの代だ!ってことですよ。
で、2年3年のもっと強くなってもっとすごい試合をしてる彼らは描かず、いきなり卒業後の話になる。これがよくある最終話のダイジェストではなくて、コミックス3巻くらいかけて「全員のその後」を描いて終わったんですよね。

主人公の日向と影山はまあ最終的にプロになるわけですが、スルッとあたりまえのように「なってる」わけじゃない。
もちろんバレーをやめた子もいる。バレーだけが人生じゃないからね。宮兄弟の分岐はすごかったなあ。全然ちがうジャンルで名を上げた子もいる。でもバレーやスポーツ周辺で生きることを決めた子もいる。みんなわりと「ああ、そうだよね」と納得できる「今」を生きていて、でもそんな彼らがかぶりつきで日向影山たちの試合を観てる、ていうのが胸アツすぎた。
この「バレーボールのある世界」の描き方がすごいなと思って。

予想外だったのは、というか私が好きすぎるだけかもしれないけど、ツッキーでした。
なんか大学まではそこそこやるけど最後には「抜けていく」側だと思ってたんですが、彼のバレーに対する執着をナメてた。コートに残る側だったんですね。もちろん就職先はあるんだけど(仙台市博物館!!)プロリーグに所属してるし、少なくとも最終回までのツッキーはバレーのことしか考えてない。日向影山の試合観て練習したくなるくらいですから。
「たかが部活」「一番になれるわけじゃない」と言っていた彼が、バレーボールの世界で生きることにしたという選択が、そうでない選択をした子たちとの対比もあってすごく重く感じられる。
最終巻の表紙、烏野メンバーで「今もバレーに生きてる」のは日向影山以外には月島だけなんですよ。学芸員なり事務員なりの格好はしてないことから、彼の主体がバレーにあることがわかります。

あとそう来るかーって思ったのがクロちゃんね。最後までひっぱったのもあって、そういう「関わり方」ってあるんだ、でもすごくクロらしいなって思った。
龍もかな。あれだけかわいい女の子を振って、そして初心を遂げたっていうのは龍にしかできないことですからね。

ニッカリ間で騒然となったのは、旭さん……
アパレルデザイナーってなに!? しかも東京で!!
あまりに動揺して、在学中の旭さんがオシャレだったかを読み返して確認するほどでした。
ちなみにほぼバレーしかしてないマンガなので日常風景なんかなかったんですけど……もしかして、長髪&ヒゲはオシャレだった!? 言われてみれば制服の着崩し方がちょっとちがう……わかるか!!

いや、いちばんはやっぱりツッキーの仙台市博物館なんだけどね!?
なんとなく勝手に理系だと思ってたのに、実はわりと歴史好きで学芸員まで取っちゃってたのかなって……いや仙台市博物館ってほぼ歴史か美術なんで、自然科学系なかった気がするんで、博物館の中でも意外中の意外できたなーと……うーん、単純に公務員ってことなのかな? いやいやいや……

あと、烏野排球部アイドル枠の繋心と永遠の女子マネ枠こと武ちゃんが、あまりにもずっといっしょにいるのでもう結婚しちゃえよって思っ……てたら武ちゃんも烏養家で五輪観てて、ああもう家族になってる……って思いました。
ご家族からもごはん食べてけとか泊まってけとか言われて、繋心の部屋に布団敷かれるまでがワンセット。もう親戚同然に思われてて、見合いまで勧められてそう。
県立だから異動がありそうなもんなのに。武ちゃんは烏野の人ではなく仙台出身(か、仙台の大学を出た首都圏の人)だと思うんですよね。地元の元ヤンと都会から来た大人っていう絶対交錯しない人生が、高校バレー部によって結びつけられたってアツイですよね。
アニメの二人は声のせいでアイドル度と女子マネ度がアップしてて大好きです。結婚しちゃえ!

そういう周辺のリアルさこそが好きだったので、ハイステ(舞台版)が初回からすごく評判いいことは承知の上で、あまり惹かれなかったのです。
私の好きなハイキューは、完璧なウィッグで再現されたキャラビジュアルでも、舞台効果を使って派手に演出された試合でもなく、ただ愚直にバレーのある世界を生きてる彼らの日常なので。
いや、ツッキーのキャストがマコト兄ちゃんになったときには正直心が揺れたけども……笑

そもそも別メディアが必要ない、それくらい完結してるマンガだと思う。
アニメはいちおう観てるけど、マンガだと読み飛ばしちゃってたアクションを動画で再確認できる、という程度の位置づけかも。動きや音はやっぱりすごいけど。
声にフックがあるのが選手の中だとクロちゃんくらいなんだよな……あれはよくない、高校生が出していい色気じゃない。

あとアニメでうわーって会場全体が盛り上がってるのを見せられると、眉ひとつ動かさず「ナイスキー」とか言ってるだけのツッキーどうなってんのって思う……応援でも控えでもちょっとは場の空気にテンション引きずられるでしょうが。それがコートのど真ん中でテンションいちばん高いところにいるのにあの冷静さ、ホントおかしいなって。


こっからは完全に余談なんですけど、けっこう前に二次創作もやってました。
WJとかの人気ジャンルでは基本的に読み専で満足してて自分では書かないんですが、たまたま自分の好みに合うものを見つけられなかったときは仕方なく自炊するんですよね。そういうアレです。

……ツッキーと東峰さんの卒業後で。
今「なんで!?」って訊かれてもうまく答えられないし、「意味わからない、ありえない!」って言われても、はあそうですねとしか……でも書いたってことは当時こういうのを読みたくて、でもどこにもなかったんだろうなとしか言えない……
そういうの説明できない、したくないときもあるじゃないですか。なんかふわっといいなってなるやつ。そのとき書きたかったものに当てはめただけかもしれない。

ただ、今見るとかなりキャラ解釈まちがってるなあと思います。
ツッキーは冷めてる隙もなくバレーボール一筋の人生歩んでるし、旭さんは田舎の兄ちゃんじゃなくシティボーイ志望だったよ。だからハイキュー二次として見ると、今となっては微妙な感じ。
もちろん二人は変わらず好きなので、仙台の学芸員と東京のアパレルデザイナーでやってもいいのですが、アパレルデザイナーは最後の最後で西谷にビュン!と攫われちゃったしなあ……(自ら攫われに行ったという話も) ツッキーもカルーアミルクしか飲まないしなあ……

この記事にページ分けてぶら下げときますが、アーカイブ的な意味なので。ご興味ある方は自己責任でどうぞ……いつもどおり決定打はないので月東でも東月でも。